現役世代の40代にとって、年金は「まだ先の話」と思いがちです。
また、年金の仕組みや制度が複雑に感じられることもあり、まだ先の話だから…と年金制度の理解を後回しにする人も多いです。
年金制度は確かに複雑ですが、年金の仕組みや制度を知ることは、将来の生活設計に役立ちます。この記事では、年金の基本的な仕組みや制度の概要をわかりやすく解説していきます。
日本の年金制度と仕組みの全体像
日本の年金制度の仕組みは、大きく分けて公的年金と私的年金があります。
公的年金が国民年金と厚生年金の2階建ての構造となっており、私的年金と呼ばれる企業年金や確定拠出年金(iDeCo)などが、3階部分を構成している3階建ての仕組みとなっています。(第3号被保険者は2階建て)
公的年金と私的年金の違いとは?
公的年金には国民年金と厚生年金があり、老後の生活を支えるための基本的な収入源です。
国民年金は公的年金の基礎になる部分で、自営業者や学生、無職の人も加入対象となっており、厚生年金は会社員や公務員などが加入する年金制度です。
私的年金は確定拠出年金(iDeCo)や個人年金保険などで、公的年金を補完するために任意で加入するものです。厚生年金に加入している人や国民年金の第3号被保険者(専業主婦など)は加入できない国民年金基金など、人によって加入できる年金と加入できない年金があるので注意が必要です。
公的年金 | 私的年金 | |
加入方式 | 強制加入 | 任意加入 |
運営機関 | 国 | 民間企業、個人など |
財源方式 | 賦課方式 | 積立方式 |
給付額 | 法律で定められている | 契約内容、運用実績による |
【公的年金の種類】
- 国民年金
- 厚生年金
【私的年金の種類】
- 確定拠出年金
- 個人年金保険
- 確定企業給付年金
- 国民年金基金
- 付加年金
公的年金の仕組みと種類
日本の公的年金制度は、現役世代が納める保険料で受給者世代を支える賦課課税方式を採用しています。
公的年金の加入者数は、令和4年度現在で6,744万人、受給者数は令和4年度現在で7,709万人となっています。5年間の加入者数は横ばいで推移しているものの、受給者数は166万人増えています。(厚生労働省:令和4年度厚生年金・国民年金事業の概況)
国民年金
20歳以上60歳未満で日本国内に住所がある人は、外国人も含むすべての人が加入対象です。(強制加入被保険者)
任意加入制度により、60歳までに受給資格を満たしていない、受給できる老齢基礎年金が満額に満たない人、日本国籍を有する海外在住の人は任意加入できます。また、厚生年金の加入者は同時に国民年金加入者です。令和6年度の保険料は、月額16,980円となっています。
国民年金の被保険者区分
国民年金と厚生年金には、それぞれ被保険者の区分があります。第1号被保険者や第2号被保険者などの区分が、国民年金と厚生年金のどちらにもあるので注意が必要です。
- 第1号被保険者(自営業者、学生など)
- 第2号被保険者(会社員、公務員など)
- 第3号被保険者(専業主婦など)
国民年金で受給できる年金の種類
国民年金は基礎年金とも呼ばれるので、3種類のすべてに基礎年金という名称がついています。
- 老齢基礎年金
受給資格期間(納付済期間、免除期間などの合算)が10年以上で65歳から受給できる - 障害基礎年金(1級または2級障害に該当する場合)
障害の原因となった病気やけがの初診日が、国民年金加入期間、あるいは年金制度に加入していない期間(20歳以前、60歳以上65歳未満)の場合に受給できる - 遺族基礎年金
生計を維持されていた遺族(子のある配偶者、子)が受給できる
厚生年金
会社員や公務員などが加入する年金で、国民年金に上乗せされる形で支給されます。適用事業所で働く70歳未満の人は、適用除外とされる人を除き強制加入です。
保険料は加入者と会社が半分ずつ負担します。公務員や私学教職員が加入していた共済年金は、現在では厚生年金に統合されています。
厚生年金の被保険者区分
一般的に第1号や第3号というと、国民年金の被保険者のことを指すことが多いですが、厚生年金にも同様の区分があります。
- 第1号厚生年金被保険者(会社員など)
- 第2号厚生年金被保険者(国家公務員など)
- 第3号厚生年金被保険者(地方公務員など)
- 第4号厚生年金被保険者(私学教職員など)
厚生年金で受給できる年金の種類
- 老齢厚生年金
老齢基礎年金の受給資格がある人に厚生年金加入期間がある場合に65歳から受給できる - 障害厚生年金(1級~3級障害に該当する場合)
障害の原因となった病気やけがの初診日が厚生年金の加入期間であること - 遺族厚生年金
生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫、祖父母のうち、最も優先順位の高い人が受給できる - 障害手当金
厚生年金加入期間中に初診日があり、5年以内に治っており(病状が固定している状態)、障害3級に該当しない人が納付要件を満たしている場合に受給できる
私的年金の仕組みと種類
老後の生活資金の基礎は公的年金ですが、ほとんどの人が公的年金だけでは不安を感じているかと思います。
そこで、老後の資金計画をより充実させるために、公的年金に加えて自主的に加入し、運用するのが私的年金です。私的年金には、確定拠出年金(iDeCo)や個人年金保険などがあります。節税効果や自由度の高さがある一方、運用リスクなどの注意点もあります。
確定拠出年金
確定拠出年金(Defined Contribution Plan, DC)は、個人や企業が拠出した掛金を運用して老後の年金資産を形成する年金制度です。公的年金と違って受け取る年金額は運用成果によって変動するのが大きな特徴です。
また、個人が運用商品を自由に選ぶことができ、節税効果も期待できるため、私的年金のメインとなっています。確定拠出年金には個人型と企業型の2種類があります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
掛金を自分で負担して、運用商品を選択する年金制度です。掛金は全額所得控除の対象、運用益が非課税も非課税です。
60歳から引き出し可能で、受取時にも税制優遇があります。このように節税効果の高い仕組みになっています。ただし、運用成果により資産が減少する可能性もあります。掛金の上限は最大で月額68,000円まで拠出可能です。
企業型確定拠出年金
個人型と異なる部分は、企業が掛金を拠出することです。役職によって企業が拠出する掛金が異なることが一般的です。運用商品は個人で選択可能ですが、企業が契約している金融機関が取り扱っている運用商品から選ぶことになります。
掛金の上限は、他の確定拠出型企業年金を実施していない場合で最大で月額55,000円まで拠出可能です。(確定拠出型の企業年金を実施している場合:最大で月額27,500まで)税制のメリットは個人型と同じです。
マッチング拠出
企業がマッチング拠出制度を導入している場合は、企業が拠出する掛金に加えて個人で掛金を上乗せすることが可能です。ただし、企業が拠出している掛金より多く拠出できません。この場合の掛金の上限は企業の掛金と合わせた額で計算します。
個人年金保険
契約者が一定期間保険料を払い、将来に年金として受け取る保険商品です。定額個人年金と変額個人年金がありますが、定額個人年金は元本割れのリスクはなく、変額個人年金は運用成績のよって年金受取額が決まるため、受取年金額が払込保険料を下回る可能性があります。
個人年金保険に元本割れのリスクはありませんが、途中解約すると元本割れする商品がほとんどです。また、低金利のため運用利率はかなり低く設定されており、有利な運用方法とは言えないでしょう。
国民年金基金制度
国民年金基金制度は自営業者やフリーランスなど、国民年金の第1号被保険者を対象にした老齢基礎年金に上乗せするための年金制度です。公的年金のひとつと言えますが、任意加入となっているため、この記事では私的年金として取り扱っています。
掛金は加入時の年齢によって異なります。掛金は全額社会保険料控除の対象になります。受給は終身年金となっており、現在の予定利率は1.5%となっています。
付加年金
付加年金も国民年金の第1号被保険者が加入対象です。国民年金保険料に月額400円を上乗せして払うことで、将来受け取る老齢基礎年金が毎年200円×付加保険料を納めた月数分が増額されます。
掛金は社会保険料控除の対象となり、物価スライドの対象にもなります。確実に年金が増やせますが、支払期間が短いと効果が薄く、受給開始から5年以上生きないと、元が取れない点に注意が必要です。
まとめ 年金制度の仕組みを知っておこう
年金制度の仕組みを理解して、自分の老後資産を計画的に構築することが大切です。国民年金に対して老齢基礎年金、厚生年金に対して厚生年金に対して老齢厚生年金になります。最初にこの関係を覚えておくと、詳細を調べたときにわかりやすくなります。
それから、公的年金と私的年金の仕組みも重要です。公的年金制度だけでは不安な時代なので、私的年金への加入も考えたほうがよいでしょう。その際に、自分が加入できる私的年金の種類や拠出限度額をチェックしておき、無理がない範囲の拠出で計画的に老後資産の構築を目指しましょう。